
出典 http://blog.goo.ne.jp
ベルリンシステムとは強力なプロテインスキマーを使用してタンパク質を取り除き、硝酸塩やリン酸塩の蓄積を抑える事が出来ます。
ベルリンシステム最大のメリットは簡単に硝酸塩やリン酸塩などの栄養塩を低く保てることで、デリケートなミドリイシといったSPSの育成が容易に出来ることです。
ベルリンシステムとは?
ベルリンシステムとは、ドイツのベルリンで発展したナチュラルシステムと呼ばれる濾過システムの1つで、栄養塩の蓄積にデリケートなSPS・サンゴの飼育システムとして確立されました。
ベルリンシステムでは大半の汚れをプロテインスキマーで除去するため、ライブロックによる最小限の生物濾過を行わない事から、硝酸塩などの栄養塩を低く抑えられ、ミドリイシやコモンサンゴといった清浄な水質を要求するSPSの飼育に適しています。
ベルリンシステムの仕組み
ベルリンシステムの特徴は通常濾材を使用せず、強力なプロテインスキマーを設置し、水中のタンパク質や有機成分を可能な限り取り除きます。
強力なプロテインスキマーにより糞や餌から排出されるタンパク質を除去し、タンパク質がアンモニア・亜硝酸・硝酸塩に分解される前に取り除きます。
これによって、アンモニアの最終分解物である硝酸塩の蓄積を低レベルに抑えることが可能になるのです。
プロテインスキマーで取りきれなかった少量のアンモニアはライブロックに棲むバクテリアによって硝酸塩に分解され、微量の硝酸塩はライブロックとライブサンド内部で脱素され窒素に濾過還元され除去されます。
この濾過サイクルが機能してベルリンシステムが立ち上がると硝酸塩をほぼ0に抑える事が出来ますよ。
ベルリンシステムでは栄養塩と呼ばれるアンモニア、亜硝酸、硝酸塩がいずれも検出されないため、清浄な水質を要求するサンゴの飼育には最適なのです。
ベルリンシステムのメリット
低栄養塩の環境を簡単に作れる
ベルリンシステムは栄養塩を水槽内で処理出来るシステムなので、低栄養塩を好むミドリイシやコモンサンゴと言ったSPSの飼育に最適です。
仕組みが簡単
基本的に濾材を取り除きハイパワースキマーを投入、通常よりライブロックを増やすだけと構造も簡単ですし、他の濾過システムからも設備を大きく変更せずに移行が可能です。
ベルリンシステムのデメリット
生物濾過が弱い
ベルリンシステムでは生物濾過をライブロックに頼っているため、急な生体の死亡での水質悪化には非常に弱い。更にスキマーがオーバースキミングして水が溢れる可能性もある。
生体が死亡したら早めの大量換水を行いケアしたい。
魚はあまり飼育出来ない
上記の通り生物濾過が弱いため濾過材を使う通常濾過ほど沢山の魚は飼育できません。スキマー次第では絶対無理ではありませんが、結局トラブルが起きやすくなったり栄養塩が除去しきれなくなってしまいます。
ベルリンシステムでは魚は少数飼育が基本となります。
ベルリンシステムの立ち上げに必要な機材
●水槽
●水槽台
●サンプ/濾過槽
●プロテインスキマー
●ライブロック
●ライブサンド
●人工海水
●水流ポンプ
●クーラー/ヒーター(気温に応じて)
●RO浄水器(SPSを飼育するなら必須)
ベルリンシステムで飼育する生体はデリケートな事が多いので、水量を確保出来るオーバーフロー水槽を選択する人が多い。
オーバーフロー水槽だと水槽下に設置した濾過槽にプロテインスキマーやカルシウムリアクターといった機材が設置できます。
とは言えベルリンシステムに必要な物は意外と少なく、水槽設備に強力なプロテインスキマーとライブロック、ライブサンドがあればベルリンシステムを始める事ができます。
水槽
ベルリンシステムの水槽サイズに制限は有りませんが、予算と設置スペースに余裕があるのなら可能な限り大きな水槽を選択して下さい。
初めてベルリンシステムで水槽を立ち上げるなら、最低でも60cmワイド(60×45×45cm)か、90cm水槽のような総水量が150ℓ以上の水槽を選択すると水質が安定しやすくスムーズに立ち上がりますよ。
理想なやはりオーバーフロー水槽の使用で、オーバーフローのメリットに水量の確保と、スキマー設置のスペース確保が挙げられます。
サンプ(濾過槽)

出展https://blogs.yahoo.co.jp/ddj115/37640774.html
ベルリンシステムでは通常濾過を行わないので、濾過槽と呼ばれるスペースをサンプと呼びます。サンプと濾過槽の違いは、サンプにはプロテインスキマーなど機材が配置し易いように、濾過槽を分ける仕切り板が少ないことです。
外掛け式のプロテインスキマーを使用すればOFシステム以外でもベルリンシステムの構築は可能ですが、高性能なプロテインスキマーはサンプに設置するインサンプ型が多く、ベルリンシステムのほとんどがオーバーフロー式を採用しています。
良くあるミスでサンプや水槽台の下に「プロテインスキマーや機材が収まらなかった」なんて笑い事では無い自体をよく聞くので、サンプや水槽台を別々に用意するならしっかり寸法を計測するように注意して下さい。
水槽台
水槽台を用意する際には使用するプロテインスキマーの高さを考慮した内寸の台を選ばないといけません。
市販の高さ70cmのキャビネットなら、高さ45cmまでのプロテインスキマーなら通常は問題なく収納できます。海水魚飼育では鉄製のアングル台は錆びやすいため、木製の水槽台やキャビネットが人気。機材の作動音や落水音を考えるならドア付きのキャビネットを選択しましょう。
サンゴがデリケートな理由
サンゴの飼育では水量が多いほど有利です。淡水魚飼育との大きな違いとして、淡水魚は水質・水温の変化が起こりやすい川や池などに生息しており、元々環境変化に適応する能力が備わっています。
ところがサンゴや海水魚は、環境の変化を受け難い海で暮らしているため急な水質の変化に弱いのです。
プロテインスキマー
ベルリンシステムの心臓部と言えるのがプロテインスキマーと呼ばれる機材です。
プロテインスキマーとは、筒の中に飼育水と微細な泡を吹き込むことによって、タンパク質を取り除き、結果的にタンパク質が分解される過程で発生するアンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩、アミノ酸、脂肪酸、リン酸などの様々な有機成分、非有機成分を取り除く事ができます。
プロテインスキマーにはさまざまな種類がありますが、主にベンチュリー式とダウンドラフト式、ベケットヘッド式の3つのタイプに分けられます。
高価な機材ではありますが、ベルリンシステムで使用するプロテインスキマーだけは妥協せず、出来る限り高性能な機種を選んでください。
プロテインスキマーの性能でベルリンシステムの安定性に大きく差がでます。
対応水量が同じでも高性能なスキマーほどより細かな泡を発生させる事が可能で、不純物の除去能力に大きな差が出ます。
ベルリンシステムの成功は、いかに速くアンモニアに分解される前の不純物を取り除けるかにかかっています。
●プロテインスキマーの効果・特徴・種類とおすすめのスキマーを紹介
ライブロック
ベルリンシステムではアンモニアの除去といった生物濾過を主にライブロックが行うため、通常のレイアウトより意識して多めに投入する必要があります。
ライブロックが少ないとベルリンシステムが機能しないので注意しましょう。
必要なライブロックの量の目安は60cmワイド水槽で8〜10kgほど、90cm水槽なら10〜15kgくらいです。
多孔質なライブロックは同じ重さでも量が多くなります。
ベルリンシステムでは立ち上げに使うライブロックの質が重要
ベルリンシステムがスムーズに立ち上がるかはライブロックの質に左右されるので、立ち上げに使用するライブロックは多少割高でも状態の良い物を購入して下さい。
状態の悪いライブロックを入れてしまうと、いつまで経っても立ち上がらない不安定な水槽になってしまいます。
多少時間が掛かっても良いので、ライブロックは通販より直接ショップへ買いに行く事をオススメします。ライブロックは1つとして同じ形の物は有りません。思い描くレイアウトの作成には、実際にライブロックを選んで購入する事が重要です。
通販でライブロックを購入するなら出来るだけ品質の良い評判の良いショップで購入しよう!

ライブサンド
ベルリンシステムを立ち上げるなら敷砂にはライブサンドを使用したい。ライブサンドを選択する理由として、ライブサンドは沢山のバクテリア付着した、文字通り「ライブ」生きた砂なので、濾過サイクルの立ち上げが明らかに早くなります。
ライブロックと併せて使えばより早く濾過サイクルを立ち上げられる他、多少ライブロックに難があってもライブサンドのバクテリアが穴埋めしてくれるとの考えも出来ます。
ライブサンドの厚みは3〜5cmくらいが理想。最近はライブサンドを2〜3cm程と浅めに敷く傾向があります。
ばくとサンドは筆者も愛用のライブサンド。立ち上げで失敗した事が無いのでばくとサンドは間違いない商品ですよ。
水流ポンプ

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ベルリンシステムでの水流は水槽の血流とも言えるほど重要で、水流が水槽全体を満遍なく循環するように水流ポンプを設置して水流を作り出します。
水流がイマイチだとライブロックの生物濾過も上手く機能しません。
通常の水流ポンプでも構いませんがウェーブポンプと呼ばれる水槽に波を発生させるポンプも人気です。
ポンプを選ぶ際には角度調節が自由にできる水流ポンプを選ぶと良いでしょう。
1台の水流ポンプでは限界があるので、水槽内に汚れを留めずサンプへ流れ落ちるようにするために、水流が弱い箇所を補うパワーヘッドと呼ばれる水流ポンプを設置します。
ベルリンシステムの立ち上げ方法
ベルリンシステムの立ち上げ方法・セッティング自体は通常のサンゴ水槽の立ち上げと同様です。
人工海水の準備
水槽設備の準備が出来たら海水を作り飼育水の循環を開始します。人工海水が溶けきり、比重が1.023〜1.024の間になり安定するまで2時間〜半日そのまま水を回しておきましょう。
一応水が透明になって比重が安定性すれば砂を投入しても良いですけどね。
ライブサンドを投入
次に、ライブサンドを3〜5cm程の厚みで敷きます。口を開けたサンドの袋を沈め、水底にゆっくり砂を出し、定規やスクレーパーでならします。水が濁り細かい塵が出るので、最初だけウールマットを使用すると早く濁りが治りますよ。
プロテインスキマーがオーバースキミングしてしまう事もあるため、様子を見ながら稼働させるか、濁りが治るまで稼働しなくて構いません。
ライブサンドを投入したら濁りが治るまでは数日水を回しておきます。
ライブロックを入れる
いよいよレイアウトの作成に入りますが、まずはライブロックが投入出来る環境かを測定しましょう。
ライブロックは様々な生物が付着しており、アンモニア・亜硝酸が検出されている水槽に導入すると表面の生物層が死滅し、更に環境を悪化させてしまう事になり兼ねません。
まずは試験薬でアンモニアと亜硝酸の試薬を使用して双方検出されない事を確認します。検出される場合は半分の水替えをして2〜3日様子を見て下さい。
アンモニア・亜硝酸が検出されなくなったら、ライブロックを投入しレイアウトのベースを作成します。
ライブロックが組み終わったら、また1週間程度は水を回しておきましょう。
再度アンモニア・亜硝酸を測定して検出されなければ、次は硝酸塩を試薬で測定します。
硝酸塩はアンモニア→亜硝酸→硝酸塩と、アンモニア・亜硝酸が最終的に分解されて蓄積する物質で、立ち上げ当初だけはライブロックの生物が環境の変化で死滅したりしてアンモニアが発生し、最終分解物質である硝酸塩が多目に蓄積してしまう事があります。
ベルリンシステムでは硝酸塩5ppmを超える場合には半分程度の水替えを行って下さい。
ベルリンシステムが立ち上がった後では、硝酸塩は殆ど蓄積しなくなりますし、魚を入れ過ぎなければ段々と減少していくはずです。
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サンゴを入れよう
硝酸塩が5ppm以下になったらサンゴを入れてみましょう。日常管理に慣れるまでは飼育しやすいソフトコーラルやLPSから入れてみるのが良いでしょう。この時から照明の点灯も開始します。
●おすすめのソフトコーラル
マメスナギンチャク
ディスクコーラル
スターポリプ
●おすすめのLPS
ハナガタサンゴ
アワサンゴ
キッカサンゴ
上記のサンゴは水槽セット初期でも丈夫なので飼育しやすくオススメですよ。
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サンゴ飼育入門におすすめのサンゴセットです。レビュー50件以上と大人気ですよ。
コケ取り生体
照明の点灯を開始すると悩まされるのがコケです。ベルリンシステムでは栄養塩を低く抑える事が出来るものの、立ち上げ初期は必ずと言って良いほどライブロックや砂の上に茶ゴケが生えてきます。
これは茶コケが珪藻と呼ばれる、珪酸塩を養分としている為で、珪酸塩は水道水に混入しています。
水槽壁面はスクレーパーを使い手で取り除くのが一番ですが、ライブサンドとライブロックはそうもいきません。そこで活躍するのがコケ取り生体と呼ばれる生物達です。
【ガラス面のコケ取り】
シッタカ貝
ガラス面やライブロックのコケを取り除いてくれる。這った後が残るので、あくまで補助として導入しよう。ひっくり返ると起き上がれなくなる事があるので注意。
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ヤエヤマギンポ
八重山諸島周辺に生息して居る事からヤエヤマギンポと呼ばれるカエルウオ/ブレ二ーの仲間で、場所を問わず茶ゴケを良く食べてくれる。
ギンポと呼ばれるカエルウオ/ブレ二ー同士は争うので要注意。少し大きく育つので小さなサンゴは動かされる事がある。
【底砂のコケ取り】
マガキガイ
ライブサンド・サンゴ砂に生える茶ゴケ掃除ならマガキガイ一択と言えるほどの定番種。ライブロック上のレイアウトにあまり干渉しない点も高評価。
(海水魚)貝 マガキ貝 ミックスサイズ(10匹) 北海道航空便要保温
【ライブロックのコケ取り】
ヤドカリ
ライブロックに付く柔らかいコケをメインに食べてくれます。ヤドカリの入っている貝殻より大きな貝殻を、お引越し用に用意してあげましょう。
イソヨコバサミなどは、日本の磯でも採取が可能ですよ。
エメラルドグリーンクラブ
ライブロックに付く柔らかいコケやバロニアを食べてくれる。
バロニアを見かける機会は少ないが、食べてくれる生体は少ないので貴重な存在です。
日常の管理・メンテナンス
●水替え
●比重の計測
●水質測定
●微量元素の添加
●スキマーの掃除
水替え
ベルリンシステムは水替えの頻度が少なくて済むため、硝酸塩の蓄積具合か微量元素の不足など、水質をチェックして水替えを行います。
水換えのスパンはサンゴの飼育数にもよりますが、1〜2週間に1回、半分くらいの量を交換します。
とは言えサンゴが増えてくると必ず足りない微量元素が出てくるので、あとは試験薬で個別に測定するしかありません。
最低限KH(カルシウム値の目安)くらいは測定したいですね。KHが下がるとカルシウムが不足している証拠で、大抵はサンゴがカルシウムを消費するので減少します。
水換えでKHを8〜12ほどで維持するか、KHが上がらないか直ぐて以下するならカルシウムリアクターの設置も検討しましょう。
中には足し水と微量元素の添加のみで3年以上水替えを行わない水槽も存在しますが、添加剤のみでの水質維持にはノウハウを必要としますから、定期的な水替えを行うようにしましょう。
水換えは全ての微量元素を過剰添加になる事なく安全に供給出来ますからね。
比重の計測
比重は蒸発により徐々に上がってしまうため、1.028を上限に足し水で1.022〜1.025の間になるように維持しましょう。
水質の測定
以下の水質を基本に、水替えの他、各種添加剤を利用し維持します。
ミドリイシの飼育ではカルシウムリアクターを使い、カルシウムリアクターで供給されないヨウ素などを添加剤で補う使い方が基本ですね。
液体添加剤をドーシングポンプで自動添加する方法もあります。
【水質の目安】
水温 24〜26℃
比重 1.022〜1.025
PH 8.1〜8.4
アンモニア(NH3) 0
亜硝酸(NO2-) 0
硝酸塩(NO3-) 2ppm以下
リン酸(PO4-3)0.05 mg/L
カルシウム(Ca2+)350〜450 mg/L
この他にヨウ素の添加も必要で、ヨウ素はサンゴの生態機能を維持するのに重要な元素ですが、プロテインスキマーにより除去され易く水槽内では枯渇しやすい傾向にあります。
この他の微量元素にストロンチウムなどがありますが、最初はサンゴの量も少ないので水替えを行う事で供給できますよ。
プロテインスキマーの掃除
プロテインスキマーの汚水カップは溜まり過ぎる前に定期的に掃除しましょう。
スキマー本体は異常が無ければ半年から年単位で掃除すれば大丈夫です。
スキマーの吸引口やインペラーが汚れてくると発生する泡が粗くなって来るので良く観察するのが重要ですよ。
【まとめ】
ベルリンシステムは驚くほど簡単にサンゴを飼育出来ます。是非ベルリンシステムでサンゴの飼育を始めてみて下さい。